カタルシス

 不幸に憧れたことはないか。傷に惹かれたことはないか。


 僕は至って凡人だ。ごく普通の家庭に生まれ、まあまあ優しい両親の愛情を受けて育ち、それなりに勉強をして、大人になった。

 ただ、僕には実は少年性愛の気がある。街中で危うげに、ふらふらと夜歩きしていたこの少年をしがない給料で衝動的に買ってしまった。少女と見紛いそうな美貌。そして何より惹かれた、人形のように生気のない、瞳。

 美しいだけならば、別に買わなかったと思う。ベッドの中で折れそうな細い体を抱き、白い肌に痛々しく映えている傷に舌を這わせる。歯を立てる。僕は加虐的な趣味はさほどなかったはずだが、なぜか彼には苦しんでもらいたいと歪んだ欲が湧く。

 彼は苦痛からなのか、快楽からなのかよくわからない声で鳴きわめいていた。僕もよくわからない声をあげながら、虚無感しかない日常で鬱積していったたいしたことのない感情をすべて、この傷ついた少年人形にぶつけた。

 行為をおえて、寝て起きると彼は窓辺で朝の光を浴びながら、煙草を吸っている。光のせいだと思うが、慈悲深い、神々しいものに見えた。


薊さまへ。

なんとなくのモノクロ差分。

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